メーカーに修理に出すって事を考えてみると、
修理って無料でやってくれるところってパッと思いつかないですよね。

利用者目線でいくと「交換(買い替え)しなくてもいいのに・・・」と思う事が多々あります。
今の時代「新しく買い替えた方が数段機能的」というものも少ないですよね。

新しく買い替えた方が良いシンプルなメリットって「新しく買った方が壊れにくい」って事じゃないでしょうか。
って事は「壊れないように作る」か「壊れた時にいつでも直す約束をする」かのどちらかがあれば利用者の懸念は解消されると思います。

そして「壊れないように作る」事は不可能かもしれないけど、「壊れた時にいつでも直す」事は可能です。
壊れないように作る事に投資するか、壊れた時に直す事に投資するかという判断の話でもあります。
企業からしたらどちらの方がいいのでしょうか。

一つの側面としては企業と顧客の接触回数があります。
一度販売してそれが絶対に壊れなかったら、そのモノを通してお客さまに会う事はないでしょう。
一方で修理する場合は、修理するタイミングでお客さまに出会うタイミングが生まれます

お客さまとの関係性を考えるとどちらの方が良いでしょうか?

一般的にお客さまと繋がりたいが為に、いろいろ施策をやります。
メルマガに登録してもらったり、ユーザ登録してもらったり。

でも、そもそもそういうわざわざやる事よりも、自然の流れで繋がる方が良いと思いませんか?
壊れたらお店に来てもらう。そして無料だったら、迷わず来ますよね。
(有料だと「新品買った方がお得かな?」のように判断が入ってしまうので・・・)

そんな事をやっているであろう企業がNudie Jeansというスウェーデンのジーンズメーカーです。
Nudie Jeansは100%オーガニックコットンのサステナビリティジーンズを提供します。

Nudie Jeans® | 100% Organic Denim

Visit the official Nudie Jeans® Online Shop for the full Nudie Jeans Collection. Jeans, jackets & clothing. A high-quality product made in a fair way.

上記の写真はオランダアムステルダムの市街地を歩いている時に撮ったものです。
ウィンドウには、デカデカと「Free repairs」と書いてあります。
ただそれだけです。他には何にもプロモーションしていません。

このワンフレーズで企業とお客さまが繋がります。
Free repairsなのだから、一度買えばずっと修理してもらえます。
企業がすれば、修理という手段で、お客さまとずっと繋がり続けます。

さらに小さな字で次のように書いてあります。

Pre-loved(一度使用したもの)を持ち込んでくれれば、新しいジーンズを買う時に20%オフにしますよ。

あなたが持ち込んだものは、中古ジーンズとして、修理して販売しますよ。

って書いてあります。

ここにも自然な流れでのお客さまと繋がり続ける工夫があり、
さらに「修理」という文脈から綺麗にストリートが出来ています。

「修理」でマネタイズするというのも1つの方法ですが、
「修理」をマーケティング手段として使うというのも1つの方法です。

こうやって「修理」という事象を見ると、自分の思考がシフトすると思いませんか?
そしてその自分の思考のシフトが、ビジネスのシフトにつながります。

そしてNudie Jeansは次のように言っています。

The Nudie Jeans Philosophy – Nudie Jeans® | 100% Organic Denim

Discover the philosophy behind Nudie Jeans, a brand driven by a passion for dry denim and a commitment to sustainability.

私たちはジーンズを売るだけのビジネスではありません。ジーンズを長くあなたの人生の一部にするビジネスです。私たちの摩耗哲学は、あなたのジーンズがあなたと同じくらい、あるいはそれ以上長く使えるようにすることです。それは、年を重ねるごとに良くなる第二の皮膚を持っているようなものです。

私たちは、2001 年にヨーテボリという小さな町でこの取り組みを始めました。スウェーデンにルーツを持つ私たちは、地球とお互いに優しくあることを日々思い出しています。オーガニックコットンや透明なプロセスだけが重要なのではなく、思いやりのあるコミュニティを築くことが重要なのです。

つまり、私たちが作るジーンズはすべて、あなたの「永遠のジーンズ」となるようにデザインされているのです。買い替えるのではなく、修理したくなるようなジーンズです。子供に譲り、子供もまたそれを子供に譲るジーンズです。私たちはただ服を作っているのではなく、未来の定番を創り出しています。ゴミではなく、ヴィンテージになる服です。

今回の「修理」は、まさに「思いやりのあるコミュニティを築くこと」を体現しているとも言えます。
そして、どんなに壊れないように作ってもいつか絶対に壊れます。

「子供に譲り、子供もまたそれを子供に譲るジーンズ」までを実現しようとすると「修理」は絶対に必要になります。
そして「修理」という手段があれば、Nudie Jeansは譲られた子供、そしてさらにその子供と繋がり続ける事が出来ます

Nudie Jeansを通して、改めて修理のすごさを実感した事例です。

投稿者プロフィール

菱木 信介
菱木 信介
外資系大手コンサルティングファームにて経営・IT・業務に関するコンサルティングを行い、生命保険会社にて経営企画部長を従事、Fintechベンチャー起業・経営を経て、「サステナビリティを1歩でも前進させたい」というパーパスを具現化すべくCircular Economy Thinking合同会社を起業。これまで培った経営コンサルティング経験、起業経験・経営経験を活かし、Circular Economy実践の為の活動を行っている。他にもCXコンサルティングやエグゼクティブコーチングも行う。